NACの募集自体が「平和の種まき」。種を蒔かれたのは、むしろ私の方です。 第9期 榊原智穂(愛知県在住) 私は第9期生として2005年11月に渡米。初めの2ヶ月月は英語の勉強に集中し、年が明けた1月からNY州を拠点に本格的に活動を始めました。でも、英語に自信がなかったことに加え、アメリカ人の前で原爆投下について語ることの怖さから、なかなか積極的になれませんでした。 原爆投下について語ることへの恐怖心を取り除けずにいた頃、ある高校でプレゼンテーションをしました。終わって片付けをしていた時に、男の子が私のところへ来て、「今日は来てくれてありがとう!実は僕、高校卒業後、志願兵になろうと思っていたんだけど、今日あなたのプレゼンテーションを聴いて、気持ちが変わったよ。兵士は人を殺す仕事だもんね。もし、僕が兵士になって、日本と戦争になったら、あなたの友達を殺さなければならなくなるかもしれないから。だから僕は、志願兵になるのをやめたよ。今日は本当にありがとう」と言い、去って行きました。その彼との出会いが、私にNAC大使としての存在価値を見出させ、自信と誇りを持って活動に臨むべきだと思わせてくれました。 NAC大使は必ず日本文化の紹介を最初にすることしています。それは、いきなり原爆投下について語っても、聞き手の心に響かないからです。アメリカにもアメリカの文化や生活があるように、日本にもその文化や一人ひとりの生活がある。そんな夏の日に、原爆は投下されたのだということを理解してもらうためでもあります。 核や平和の専門家ではない私が、プレゼンテーションを重ねていくたびに、自分の意識の変化を感じながら、平和へのメッセージを力強く、自信を持って、アメリカ人に伝えられるようになっていきました。それを受け、現地の子ども達も、教科書や書物から同じことを学んだときとは違う反応を見せてくれました。NACのすばらしいところは、どこにでもいるような若者が、大使に選ばれたことで、「平和」に興味、関心を持つようになり、「誰かに伝えたい!伝えなくては!」と危機感を持って、主体的に平和活動に関わるきっかけをつくるところだと思っています。 私はNACから「平和の心」をもらったと思っています。「平和」について考えるきっかけを与えてもらい、「平和」のために何かしようとしている人たちと出会えました。「平和」について考え行動することで、自分がより自分らしい生き方や物事の捉え方、考え方を見つけられたような気がしています。NACの活動報告をすると、「あなたは平和の種まきをしてきたんだね」と言われることが多いのですが、私にとっては、NACの募集自体が「平和の種まき」だったと感じています。私は平和の種を蒔いた方ではなく、むしろ蒔かれた方なのだと実感しています。
※この体験談は2月11日に名古屋で行われた記者会見の内容を要約したものです。
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2011年春 10期生 本格始動! >